シナリオ・脚本論

脚本家の作家事務所に入るには?メリットデメリット・仕事内容などまとめました

こんにちは、高橋ソマリ(@somari01)です☺️

今回は、プロの脚本家になりたい人が気になる「作家事務所」について書いていきます。

なんのツテもコネもない状態からプロの脚本家になりたい場合、一般的にはコンクールに受賞してデビューするというのが黄金ルートです。たぶん大多数の人がこの道を目指しているでしょう。

しかし、最もデビューできる確率が高いテレビ局のシナリオ大賞なんかは応募者が数千人に及ぶので、その中からわずか3〜4作品(大賞〜佳作)に選ばれるのは至難の技ですよね……(>_<)

高橋ソマリ
余談ですが、テレビ局のコンクールの中でも圧倒的にデビュー実績が多いのは「フジテレビヤングシナリオ大賞」です。

とはいえ、プロの脚本家が全員コンクール出身かといえば全くそんなことはなく、むしろ末端の脚本家まで含めればコンクール以外のルートからデビューした人の方が圧倒的に多いと思います。

そのコンクール以外のデビュールートとして有力なのが、今回書きたい「作家事務所」です。

要するに「作家事務所に所属して、そこから仕事をもらう」というもの。芸能人が事務所に入って小さい仕事からこなしていくのと同じイメージですね💡

高橋ソマリ
じつは私、事務所事情についてはちょっと詳しいのです(笑)

この記事では、

  • 脚本家の事務所に入ると、どんな仕事をするの?
  • 事務所に所属するメリット・デメリット
  • 事務所への入り方
  • 有名どころの脚本家事務所

といった、シナリオライターの卵が気になる点をまとめていきます!

 

脚本家の事務所に入るとどんな仕事するの?

高橋ソマリ
具体的な部分は事務所ごとの事情によるので、ここで書くのはあくまで「一般論」です。

まだデビューや実績も少ない「新人」として事務所に入った場合、事務所経由で回ってくる仕事のほとんどは「企画書」か「プロット書き」です。

期待させると申し訳ないので最初に言っておくと、事務所に入っていきなりシナリオを書かせてもらえるなんてことはほとんどないかと思います。

まずは企画書やプロットを大量にこなす、いわゆる下積みのようなイメージですね。

「企画書」とか「プロット」と一口に言っても作業内容はピンキリで、

  • 「月9枠で20代女性が主人公の良さげな原作探してA4ペラ1枚で内容まとめて」

みたいな簡単なものもあれば、

  • 「今後、○○主演でこの原作やるから全10話想定でプロット書いて(A4用紙10枚〜20枚レベル)」

みたいな骨の折れる仕事もあります。

一番最初は「原作探して企画書を書く」が多い

私のイメージでは、最初の頃は圧倒的に「原作探し(ペラ数枚程度の企画書)」が多い気がします。

主演がまず決まってて最適な原作探しとか、主人公スペックとジャンル指定(20代女性主人公のお仕事ものとか)だけあって最適な原作探しとか……とかとかとか。

高橋ソマリ
近年の映画やドラマはほとんどが原作ありきなので、原作探しの仕事は本当に多いです。ほとんどADみたいな仕事です。

また、オリジナル企画では「アイディア出し」の仕事なんかもありますね。「この枠でオリジナルドラマやるんだけど〜」みたいな話がきて、企画のアイディアをペラ数枚にまとめて出すという感じ。

あるいは原作モノだけどオリジナルのストーリーで行くからアイディア出して、というパターンもあったりします。

高橋ソマリ
企画書を出す仕事は、企画が採用されない限りはノーギャラのケースが超多いです😭😭

企画書が通るとプロット書きに昇進

自分が出した企画書が通ったりすると、もう少し具体的なプロット書きの仕事まで任されたりします。A4用紙で5枚〜20枚くらいでしょうか。この辺は担当しているプロデューサーによります。

テレビドラマだとスケジュール的に締切がタイトなケースが多いので(中3日で!とかザラ)、プロット仕事になると結構本腰入れて取り組む必要がありますね。

その代わり、プロットまでこなせば少なからずギャラが発生することが多いです。たとえ、プロットを書いたものの企画が実現しなかった場合でもギャラは支払われると思います。

高橋ソマリ
ただ私の経験上、プロット1本あたりで10万以上のギャラを貰ったことないです……。企画にもよりますが、5万〜10万円くらいのイメージしておけば良いかと

もしプロットを担当した企画が実現(ドラマ化・映画化など)することになったとして、肝心のシナリオまで書かせてもらえることは稀です。残念ながら大体はプロの脚本家だったり、事務所の先輩作家などがシナリオを書くことになります。

とはいえ、プロットまで書けば「プロット担当」や「脚本協力」といったカタチでしっかり実績になります。企画によっては「脚本協力」としてちゃんとクレジットされる(作品に名前が載る)こともありますよ👍

下積みを重ね、やがてシナリオの1話・2話を書かせてもらえるように

企画書やプロットなど下積みを重ねれば、やがて1話分や2話分のシナリオを書かせてもらえる日が来たりします。

大体は先輩作家がメインライターで入っている企画で、そのうち数話が下の作家に降りてくる感じですね。バーター出演みたいな感じでしょうか(笑)

なにわともあれ、ここまでくると念願のシナリオデビューです\(^o^)/

全10話のうち1話だけだろうとデビューはデビューです。異論は言わせません(笑)。ライター実績にもちゃんと書けるので、次の仕事にも繋がりやすいです。

ただ残念ながら、作品としての脚本家クレジットはあくまでメインライターの名前が載ることがほとんどです。

高橋ソマリ
世間のテレビドラマも、脚本家として名前が載っている作家が必ずしも全話を書いているわけではなく、うち数話は別の作家が書いて「分業」していることも多いのです

 

脚本家事務所に所属するメリット・デメリット

脚本家事務所に入るメリットは「仕事を得られること」

メリットは何と言っても「小さくとも仕事にありつけること」に尽きます。

最初は確かに、原作探しやアイディア出しなどAD的な仕事も多いです。しかもノーギャラだったり……。それでも、企画書やプロットを出せるということはプロデューサーに自分をアピールできる大事な機会になるので、この機会をどんどん得られるのは大きなメリットです。

業界になんのコネもツテもない人は、まずプロデューサーに企画書を見てもらうことすら難しいのが実情です。普通だったら何かしらのコンクールに受賞して初めてプロデューサーと繋がりができて、企画書の仕事が回ってくる……というレベルですよね。

高橋ソマリ
コンクールをすっ飛ばして企画書やプロットの仕事をバンバンこなせるので、事務所に入ればこそのメリットではないでしょうか

そして前述の通り、企画書やプロットの下積みを経て、ついには脚本(シナリオ)を書かせてもらえる可能性もあります。

「コンクールで受賞しなくても脚本家デビューできる可能性がある」

というのも最大のメリットですね。

脚本家事務所に入るデメリットは「ギャラの取り分が減る」こと

事務所に所属するデメリットは、ひとえに「お金の問題」です。

芸能人のギャラ事情と同じで、テレビ局や制作会社から支払われるギャラは事務所と分けることになります。つまり事務所に入れば脚本家の取り分が減ります。

事務所に何割取られるかは、事務所ごとに違います。

私が色々と聞き知った範囲だと、【脚本家:事務所】で5:5〜7:3くらいの感じでした。

5:5とかだと、ギャラの半分は事務所に持ってかれるのでかなりイタいですよね。ただでさえ脚本家のギャラ相場が昔より下がってきてると聞くのに(>_<)

仕事の機会を取るか、ギャラを取るかは、その人のステージにもよるでしょう。

まだデビューすらしてない人であれば仕事の機会を最優先にするのは合理的ですし、自分の名前で仕事が取れるレベルになればギャラ事情を優先して独立するのもアリですよね。

 

脚本家事務所に所属するにはどうすればいいの?

脚本家事務所に所属する方法としては、大きく4つあるかと思います。

  1. ツテからの紹介
  2. 事務所の脚本家募集やシナリオ講座に応募する
  3. シナリオセンターなどからの紹介・募集経由
  4. 事務所へ直接コンタクトを取って売り込み

まずはツテの紹介ですが、「ツテがあれば苦労しないよ!」という人がほとんどだと思うので飛ばします(笑)

事務所の脚本家募集やシナリオ講座に応募

現実的なのは、事務所の作家募集に応募したり、セミナーやシナリオ講座を行なっているケースが結構あるので、そこに応募して売り込みのチャンスを狙うパターンですね。

ただ、全ての事務所が表向きに脚本家募集していたり講座を開いているわけではありません。

定期的に脚本家募集したりシナリオ講座を行なっている事務所などは後述で紹介します。

シナリオセンターなどスクールからの紹介やツテ

続いて、シナリオセンターや脚本スクールにて、作家事務所が企画募集や作家募集をかけることがあるので、そのチャンスを掴むパターンですね。

聞いた話だと、やはりシナリオセンターはそういう機会が多いようです。

高橋ソマリ
私はシナリオセンターは秒速でやめてしまったのですが、こういう機会を逃さないためだけに通っておいた方が良かったかも?(笑)

事務所に直接コンタクトして売り込み

飛び込み営業というヤツです👍

ただ、この場合は何かしら実績がないと見向きされないでしょう。小さくとも何かしらコンクール受賞経験があるとか、プロットや脚本協力の経験があるとか。

飛び込み営業とはいえ、いきなり訪問するのではなく事務所のHPから問い合わせましょう。意外と親切に返信が返ってきたりします。多少でも「お?」と思わせられれば、面会くらいには取り付ける可能性がありますよ。

高橋ソマリ
じつは私も、昔ある事務所に自らコンタクトを取ったことがあります。

親切にも、わざわざ代表の方が面接(という名の雑談)の時間を取ってくださいました。結果的には経験不足でダメでしたけど、色々お話できただけでも良い経験でしたよ☺️

 

有名どころの脚本事務所を紹介

高橋ソマリ
最後に、脚本家事務所として名の知れているところをいくつか紹介します!

MAフィールド

公式サイト:http://ma-field.com

代表的な所属作家:酒井雅秋、丸茂周、鈴木太一(敬称略)

MAフィールドは所属作家も多く、作家募集やシナリオ講座も行なっているのでチャンスの多い事務所というイメージですね。

脚本家募集は、プロアマ問わず(ただし実績のある人優遇)。応募には映像向けシナリオとプロフィールが必要になります。自信作がある人は応募してみてはどうでしょうか٩( 'ω' )و

(※常時募集しているとは限りません)

オリガミクスパートナーズ

公式サイト:http://www.origamix.co.jp

代表的な所属作家:渡辺雄介、徳永友一、桑村さや香(敬称略)

渡辺雄介さんや桑村さや香さんなど、第一線で活躍する脚本家を多数抱えるオリガミクスパートナーズ。

正直、まだ実績が少ない作家にはちょっとハードルが高いですね。

一応、公式サイトで常時クリエイター募集を行なっています。応募条件は下記の通り。

募集職種

  • 監督:商業作品を監督した経験がある方
  • 脚本家:映画・ドラマ・ゲームのシナリオを執筆した経験がある方
  • 小説家:執筆した作品が書籍として刊行された経験がある方
  • 漫画家:執筆した作品が書籍として刊行された経験がある方

実績が足りない人が狙うなら、一番裾野の広いゲームシナリオで実績を作って応募することでしょうか。シナリオセンターならゲームシナリオの募集多いですよ。

 

sacca株式会社

公式サイト:http://sacca.co.jp

代表的な所属作家:吉澤智子、小山正太、いずみ吉紘(敬称略)

saccaは、所属作家はそこそこ多いですが、すでに第一線で活躍されているプロたちが多いですね。

ただ、公式サイトで「作家募集」と「プロットライター募集」を行なっているので、デビュー済みのプロ以外完全お断りというわけでもなさそうです。

どちらも企画書(プロット含む)の提出で審査となっています。

一応、それぞれの内容を載せておきます。

所属作家募集

企画内容:地上波ゴールデン枠の連続ドラマ(60分×10話)を想定
原作もの(オリジナルは不可)
ファイル形式:wordまたはPDF A4縦サイズに横書き
フォーマット:
1ページ目:表紙(原作タイトル・出版社・企画書執筆者氏名)
2・3ページ:キャッチコピー、ドラマ化にあたってのセールスポイント
4ページ:キャラクター表(主役級2~3名分)
5ページ:キャラクター表(その他のキャラ)
6ページ:1話プロット
7~9ページ:2話~9話プロット
10ページ:最終話プロット

 

プロットライター募集

企画内容:地上波ゴールデン枠の連続ドラマ(60分×10話)を想定
原作もの(オリジナルは不可)
ファイル形式:wordまたはPDF A4縦サイズに横書き
フォーマット:
1ページ目:表紙(原作タイトル・出版社・企画書執筆者氏名)
2・3ページ:キャッチコピー、ドラマ化にあたってのセールスポイント
4ページ:キャラクター表(主役級2~3名分)
5ページ:キャラクター表(その他のキャラ)
6ページ:1話プロット

高橋ソマリ
(※)あくまで記事執筆時点での情報です。

詳細は公式サイト(http://sacca.co.jp)でご確認ください。

 

Office BLUE(オフィスブルー)

公式サイト:http://takehiko-hata.com

代表的な所属作家:秦建日子、猪原健太(敬称略)

オフィスブルーは、脚本家・小説家・演劇とマルチに活躍する大御所作家・秦建日子(はた たけひこ)さんが代表を勤める事務所です。

秦建日子さんの舞台制作をはじめ、脚本家のマネージメントも行なっています。ここまで紹介した事務所と比較すると、デビュー前や実績のまだ少ない所属作家も多いですね。

公式サイトを見るに所属作家の募集などは行なっていないようなので、完全にツテを辿って入るか、秦建日子さんに直接アプローチするしかないかもしれません。

代表である秦建日子さんはTwitterもやってるので、SNSからアプローチはしやすいかもしれませんよ。

高橋ソマリ
……と思ったら、秦建日子さんのツイッターは鍵アカでした(笑)。一応ツイッターアカウントはこちら

 

ドリームプラス

公式サイト:http://dreamp.jp/front/

代表的な所属作家:江頭美智留、松田裕子、横田理恵(敬称略)

すみません、正直あまり情報がありません。。。

「ごくせん」や「ナースのお仕事」の脚本家である江頭美智留さんがいる……というくらい。調べてみると大手のドラマ制作会社MMJ(メディア・ミックス・ジャパン)と業務関係があるようですね。事務所の代表が元?MMJの役員の方らしいです。

脚本家募集などもしていないし、外向きではなさそうな雰囲気です。代表の木村元子さんがプロデューサーの方なので、信頼ある脚本家を集めて事務所立ち上げた感じでしょうか。

まとめ

もうコンクールに希望を見るのは疲れたよ・・・

なんて人、絶対に多いですよね。そういう人は攻め方を変えて、事務所に所属してプロデビューを目指す道も検討してみるといいかもしれません。

もちろん、事務所に所属するのも競争ですし、所属できたからといって必ずしもシナリオデビューできるかは分かりません。

それでも、コンクール受賞よりは勝率の良い勝負だとは思いますよ💡

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