こんにちは、高橋ソマリ(@somari01)です😊
今回は、「脚本家(シナリオライター)になるのに社会人経験は必要なのか?」という問題について書いてみたいと思います。
というのも、脚本スクールとか見ても分かるんですけど、脚本家を目指す人って主婦やフリーターの方が分母としてものすごく多いんですね。言い方悪くなっちゃうんですけど「社会人経験が薄い人たち」です。
「社会人経験がない」というコンプレックスは思いのほか強くて、書けるジャンルもとても狭くなってしまう上、国民の大多数である「会社員」というキャラ属性が雰囲気でしか書けないのでシナリオがペラペラになりやすいんですよね。
下記は漫画家さんのツイートですが、社会人経験のなさが露呈してしまうという問題です👇
俺たち漫画家は社会経験がマジで無いから会社のシーンとかも書類をトントンするみたいな描写ばっかり描く。
— ニャロメロン (@nyaromeron) 2019年1月27日
漫画であればファンタジーや冒険物とか多様なジャンルに需要があるので事情が違いますが、映画やドラマの脚本でサラリーマンが書けないのは結構致命的です(>_<)
シナリオコンクールの作品は「フリーター」「学生」の話が多い
いつだったかの月刊ドラマでコンクールの審査員が話していましたが、コンクールの応募作品は主人公が「フリーター」「学生」であることが非常に多いのだそうです。
言わずもがな、応募者に社会人経験が薄い人が多いので、フリーター(バンドマンとか夢追い人を含む)か学生の話しか書けないのだろうな……という事情が想像できますね。
こうした応募作が多い中、池井戸作品のような緻密な企業サスペンスドラマが書けたり、自分の働く業界や職業について実体験に基づいて深く掘り下げた作品が書けると、それだけで千を超える応募作の山のなかでキラリと目立つことができるのでコンクールでは有利です( ´∀`)
もちろん、学生やフリーターの話で受賞している作品も数多くありますが、アドバンテージが取れるという意味で作者の社会人経験は創作活動での「財産」になるのは間違いありません。
結局は才能的に難しいだろうなと安定を取って就職したチキンなのですが、そこには一応「この先もし脚本家を目指すことがあるにしろ、社会人は経験しておいた方が書ける幅が広がるだろう」という考えもありました。一応ね、一応(笑)
社会人経験がなくてもプロの脚本家(シナリオライター)にはなれるはず
社会人経験、広い意味でいうと作者の「人生経験」は作品を作るうえで大きな財産になるのは間違いありません。
「逃げ恥」「アンナチュラル」「図書館戦争」などヒット作を続々と手がけて今や人気脚本家になった野木亜紀子さん(@nog_ak)も、脚本家デビューこそ30代後半と遅咲きと言えますが、それまでずっとドキュメンタリーの制作会社で働いていた経験が今の創作活動で役に立っていると話しています。
……とはいえ、とはいえですよ。
これはあくまで「社会人経験が強みになる」という話であって、「社会人経験がないとダメ」という話ではありません。
実際に、リーガルハイなどで知られる天才脚本家・古沢良太さん(@kosawaryota)はテレ朝のコンクールで賞取ってデビューするまでフリーター? ニート?みたいな感じですよね。一応漫画家目指してたけど……みたいな(違ってたらすみません!(>_<))
渡辺雄介さんみたいに学生時代からデビューしている人も多いし、他にも探せば会社員経験なく脚本家になってる人なんて数え切れないくらいいるはずです。
そもそも「経験がないから書けない」なんて言ってたら警察ドラマなんて誰も書けませんからね(笑)。そこは通常、綿密な取材やリサーチを行なってカバーすることになります。
なので、社会人経験は活かすことができるポイントではあっても、ないといけないものではないはず。知らない世界について綿密に取材して書けるようになるのも、プロ脚本家に求められる一つのスキルだと思いますからね👍
だから必然的に取材やリサーチなしで書けるフリーターとか学生モノが増えるわけですね
「作家は人生最後の仕事」と言うけれど、脚本家は職人だと思う
最後は余談になるのですが、
13歳のハローワークという職業図鑑のサイトで、作家という職業項目で「作家とは人生最後の仕事である」という解説がされているのが非常に心に残っています。
13歳から「作家になりたいんですが」と相談を受けたら、「作家は人に残された最後の職業で、本当になろうと思えばいつでもなれるので、とりあえず今はほかのことに目を向けたほうがいいですよ」とアドバイスすべきだろう。
医師から作家になった人、教師から作家になった人、新聞記者から作家になった人、編集者から作家になった人、官僚から作家になった人、政治家から作家になった人、科学者から作家になった人、経営者から作家になった人、元犯罪者で服役の後で作家になった人、ギャンブラーから作家になった人、風俗嬢から作家になった人など、「作家への道」は作家の数だけバラエティがあるが、作家から政治家になった人がわずかにいるだけで、その逆はほとんどない。
つまり作家から医師や教師になる人はほとんどいない。それは、作家が「一度なったらやめられないおいしい仕事」だからではなく、ほかに転身できない「最後の仕事」だからだ。
服役囚でも、入院患者でも、死刑囚でも、亡命者でも、犯罪者でも、引きこもりでも、ホームレスでもできる仕事は作家しかない。作家の条件とはただ1つ、社会に対し、あるいは特定の誰かに対し、伝える必要と価値のある情報を持っているかどうかだ。
伝える必要と価値のある情報を持っていて、もう残された生き方は作家しかない、そう思ったときに、作家になればいい。
”どんな職業からでも作家へはなれるけど、作家から他の道は不可逆である”という主張はごもっともですが、その点はひとまず置いておきましょう。
私がこの解説を見て感じるのは、やはり「作家という仕事は、それまでの人生経験に立脚するものなのだな」ということです。
とは言いつつ、この「作家」とは小説家やエッセイストのようなジャンルの話で、脚本家はちょっと路線がズレてるかなーというのが率直な印象。
私の中で脚本家という職業は、作家というより「職人」という方がイメージに近いです。
いわば料理人のようなもので、手元にある素材をどう使ってどんな作品を仕上げるかに試行錯誤するのが脚本家の仕事。作家はどちらかというと野菜から自分で育てる農家のイメージです。
とくに近年は原作モノが大半ですし、スポンサーや他方面の意向も入ってくるので、真に自分の内面から作品を作り出すことなんてできません。大抵は、与えられた素材を調理して「料理」として仕上げるのが脚本家の仕事です。それは作家というより「職人」の技ではないでしょうか?
なので私は、脚本家という職人には「人生経験」よりも「スキル」の方がウェイト高いんじゃないかなぁと思っています💡(もちろん、人生経験はあるに越したことないですけどね!)