こんにちは、高橋ソマリ(@somari01)です☺️
今回は、映画やドラマでは定番である「天才キャラ」についてコラムを書きたいと思います。
私は小説もドラマもミステリーが大好きで、ミステリーやサスペンスのシナリオをよく書いていたし、ミステリー物の企画のお仕事をすることが多かったのですが、そこで毎回頭を悩ませていたのが、
天才キャラが書けない・・・(泣)
ということでした。
なんで書けないんだろう?
考えるまでもないですよね。
名探偵、名刑事、天才詐欺師、天才犯罪者、天才物理学者と、こと事件ものには「頭のキレるキャラ」の存在が大きな魅力の一つになります。
でも、天才キャラって本当に描くのが難しい。
だって理屈で考えれば、生みの親である作者の頭以上に頭良いキャラは書けないから。
でも、映画やドラマにはIQ150以上の天才キャラがバンバン出てきますよね? ならその脚本を書いた人はみんなIQ150以上なのかというと、当然そんなわけありません。
結論から言うと、世の創作物に出てくる天才キャラのほとんどは、
観てる私たちに「このキャラ天才だなぁ」と”思わせる”キャラ
ではなく、
作り手側が「このキャラ天才です」と”見せている”キャラでしかありません。
これだけだと「はい?」となる人多いと思うので、下記で詳しく書いていきますね!
私が「天才」に納得できるキャラクター
「天才」という言葉は、それ自体が曖昧で定義がありません。人によって天才の捉え方・感じ方は違うと思います。
皆さんは、人(=キャラ)のどういうところを見て「天才だなぁ」と感じますか??
- 肩書き?
- 知識量?
- セリフ?
ちなみに私は、天才の天才たる一面は「思考」にこそ現れると思っています💡
まぁこの辺は一度置いておくとして。
本当の天才キャラとは、「そのキャラの行動や発言から、観ている人が自発的に天才だと感じるようでないといけない」という点が重要だと私は思っています。
映画・ドラマ・小説・漫画と、今まで一体何作の物語を読んできたか分からない私ですが、読んでいて本当に納得できる天才キャラというのは指で数えるほどしか出会ったことがありません。
99%の「天才キャラ」は天才という設定が付いただけのキャラでしかなく、読み手である私自身がそのキャラの言動から「これは天才だなぁ」と感心するケースは驚くほど稀です。
高度な頭脳戦を描いたデスノートのL(エル)
そんな数少ない私が天才を納得したキャラの一例を挙げると、
まず漫画から、デスノートの「L(エル)」です。
デスノートは天才2人の高度な頭脳戦を描いた大人気漫画です。説明不要ですよね。
デスノートはモノローグ(発言ではない思考の描写)が非常に多く、天才が頭の中で何を考えているのかが事細かに書かれているのが特徴です。
ただ突飛な行動をするのでなく、急に謎の発想力を披露するわけでもなく、その言動に至るまでの「ロジック=思考回路」の部分に私は天才性を感じるわけですね。
基本的には、
- まず月(主人公)をピンチに追い詰める
- 追い詰めてから、どうやって回避するか必死に考える
という感じで、よくある「逆算してストーリーを作る」わけではなかったようです。
まず月をピンチに追い込んでしまって、そこで作者自身が「どうしようどうしよう」と打開策を一生懸命考える……の連続で、あの頭脳戦が繰り広げられたそうな(笑)。
間違いなく、作者の大場先生自身が天才ですね💡
天才作家・森博嗣が描く”人類史上最高の天才”「真賀田四季」
もう一人、私が納得できる天才キャラを挙げると、
小説から、森博嗣先生のS&Mシリーズに出てくる天才科学者・プログラマー「真賀田四季(まがた しき)」ですね。「小説史上もっとも天才キャラは誰か?」というネットトピックで必ず名前が挙がる名キャラクターです。
作中で「人類のうちで最も神に近い存在」という巨大看板が付いているようなキャラなのですが、小説内の真賀田四季の思考・発言・行動を観ていると、人類史上最高の頭脳と呼ばれていても納得できるように思えてくるんですよね。
この説得力は、作者である森博嗣さん自身が紛れもない天才だからこそ書ける技だと思っています。
森博嗣という天才作家については別記事で書きたいところですが、一部紹介しておきますね。
天才作家・森博嗣はこんな人
- 本職:工学博士
- 31歳で名古屋大学の助教授になり、論文や専門書も多数執筆。
- 31歳で初めて書いた小説でいきなりデビュー。小説のメフィスト賞はもともと森博嗣をデビューさせるために作られた
- 小説は好きではなく、もともと読んだこともほとんどなかった
- 小説は本人にとって「稼げるバイト」であり、1日2時間程度しか書かない
- 1時間で6000文字を書く超速筆であり、本業もありながら20年間で280冊を出版している
- バイト「小説書き」で稼いだ総額は15億円を超える
- 小説でも大ヒット作家だが、エッセイでも大ヒット作家
森博嗣作品に関しては、本物の天才が天才キャラを描いているので、天才たる説得力が出せるんですよね。
作家を目指している全ての人は、森博嗣さんのビジネス本「小説家という職業」と「作家の収支」は絶対に読んでおいた方がいいですよ。森博嗣という天才の仕事に対する考え方からお金事情まで色々と暴露していて面白いです☺️
天才”っぽく”みせるキャラの作り方
( Hulu(フールー) オリジナルドラマのミス・シャーロック)
世の中のほとんどの「天才キャラ」は、デスノートのLや真賀田四季のように、読んでいる方に「このキャラ天才だ……」と納得させられる力があるキャラではないですよね。
その多くが、「天才」という名札(設定)を付けただけのキャラに過ぎません。
例えば「IQ180の天才探偵」という設定があったら、そのキャラは天才だと思えるでしょうか?
いいえ、思えません。そこに「IQ180にふさわしい思考・発言・行動」が伴って初めて天才に説得力が生まれます。
……でも、この説得力を持たせるのが難しいわけですよね。だって、そのキャラを動かしている作家自身が天才ではないのですから、天才の思考回路を書くことはどうやったってできません(>_<)
なので真の天才キャラを作ることは非常に難しいのですが、「天才っぽく見せるキャラ」なら何となく作ることできるんですよね。
天才っぽく見せる秘訣は2つあります💡
- 知識量を披露する
- 華麗に事件を紐解かせる
この2つは、別に天才じゃなくてもミステリー得意な作家ならスキルでこなせる範囲です。
まず知識量については、知識なら雑学なりリサーチしてキャラに喋らせればいいだけです。コナンくんもガリレオも物知りですが、物知りっていうだけで頭が良く見えてしまいますよね。
(どうして麻薬の味を知っているんでしょーかw)
こうした、知識量を披露したり小難しい数式とかを書き始めることで頭良いと思わせるパターンを私は「天才のファッション」と呼んでいます。おきまりのファッション着せてあげれば外見は天才っぽく見えるよね、という皮肉です(笑)。
あとは、華麗に事件や謎を紐解いていく過程を披露すること。
この点については、ミステリー物は作り方的に事件のトリックが最初に決まっていて、あとは「探偵役に、どこからどう気づかせていくか?」を逆算して組み立てればいいので、頭脳というよりテクニックの問題です。
こうした謎解きのロジック力は鍛えられるテクニックなんですよね。じゃないとコナン作者の青山剛昌先生とかあれだけの事件数を量産できるとは思えません。
犯人の暴き方にしても「犯人しか知り得ないことを喋らせる」みたいなパターンがいくつかあります。ミステリーはこうした法則や王道のパターンみたいなのが多種多様にあって、その組み合わせによって色々な事件や解決手順を量産できるようになるのだと私は考えています☺️
私の中ではコナン君も「天才という名札を付けたキャラ」でしかないのですけどね(笑)
まとめ
推理小説の作法とかミステリーの書き方ってテクニックなので、天才っぽく見せるキャラは作れるというお話でした。
この辺は作者の頭脳というよりも、ミステリーを作るノウハウやテクニックの力量がものをいうところです。ミステリー書きたい人はこちらの本とか必読ですよ。日本を代表するミステリー作家たちがストーリー作法について語っています👇