邦画

【ネタバレ感想】映画「翔んで埼玉」ヒットの要因は脚本とキャスティングにあり!

こんにちは、ソマリ(@somari01)です☺️

いま話題になっている「翔んで埼玉」をようやく観に行くことができましたー! ということで、ダンベルより重い筆を取ってブログ記事をせっせと書いてまいります。

翔んで埼玉、皆さんはもう観ましたか? 予想外の大ヒットになってますよね。

Yahoo!映画では公開初週でジェームズキャメロン率いる「アリータ」を抜くという波乱を起こし、レビューも☆4.2という文句なしの高評価が付いています。

ちょっと調べてみたら、公開最初の土日で興収3億円くらい出したそうな。

一般的に最終興収は「初週末の興収 × 7倍」くらいが一つの目安と言われるので、最初の土日3億なら最終20億円超えるかなーなんて予想していたら、すでにもう20億円突破しているとのこと!勢いがすごい!

それなりにハードル高めの状態で観にいきましたが、期待通りの面白さでエンドロールまでクスクス笑ってしまいました😊

今回は、そんな「飛んで埼玉」のヒットの要素を私なりにメモとしてまとめていきたいと思います。

高橋ソマリ
ネタバレありの記事です。内容を知りたくない方はご注意くださいm(._.)m

 

企画・脚本が想像以上にしっかりした出来だった!

動画「翔んで埼玉」予告編

翔んで埼玉の大まかなストーリーや世界観は、予告編だけでも十分に伝わります。

『埼玉ディスり』をテーマにした『壮大な茶番劇』

そういうの大好物です、私。

一応あらすじも置いておきますね。

あらすじ

その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。

通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていない者は見つかると強制送還されるため、
埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。

東京にある、超名門校・白鵬堂学院では、都知事の息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉県人を底辺とするヒエラルキーの頂点に、生徒会長として君臨していた。

しかし、アメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)の出現により、百美の運命は大きく狂い始める。

麗は実は隠れ埼玉県人で、手形制度撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線の主要メンバーだったのだ。
その正体がばれて追われる身となった麗に、百美は地位も未来も投げ捨ててついていく。

2人の逃避行に立ちはだかるのは、埼玉の永遠のライバル・千葉解放戦線の一員であり、壇ノ浦家に使える執事の阿久津翔(伊勢谷友介)だった。

東京を巡る埼玉vs千葉の大抗争が群馬や神奈川、栃木、茨城も巻き込んでいくなか、伝説の埼玉県人・埼玉デューク(京本政樹)に助けられながら、百美と麗は東京に立ち向かう。

果たして埼玉の、さらには関東の、いや日本の未来はどうなるのか――!?

『翔んで埼玉』公式サイトより)

脚本に明確なログラインがあり、ストーリーに迷わない

翔んで埼玉を観て、まず率直に感じたのは、「思ったより脚本がすごいしっかりしてる!」ということでした。面白いどうこうではなく「作り」がしっかりしています。

私は、”映画は脚本こそ背骨であり命である”と考えているので、どんなに企画や役者が良くても脚本が微妙な作品に感銘を受けることはありません。

コメディ作品というと、要所要所で笑わせることが目的になって全体の軸となるストーリーラインがない作品が結構あるのですが(斉木楠雄とか)、その点で、翔んで埼玉は1本のしっかりした軸(ストーリー)が作品全体に通っています。

この軸のことを専門用語で「ログライン」とか「アウトライン」と言います。

簡単に言うと「その映画のストーリーを一言で言うなら?」に当たるものですね💡

翔んで埼玉のログライン

「東京に迫害を受けてきた埼玉県人が、”通行手形(=差別)”の撤廃を目指して東京に反乱を起こす」

このようにログラインが明確だと、「物語がどこに向かって進んでいるのか?」「主人公がなにを目指す話なのか?」という指針がわかりやすくなり、観客を迷わせることなく物語のキャラ達と一緒にゴールへ運ばせることができます。

高橋ソマリ
一貫したログラインがない、あるいはログラインが曖昧ゆえに「結局なんの話なのかイマイチ分からない……」とか「物語が進んでいる感じがしない……」みたいな雰囲気押しのフワッフワな作品も多いですよね😢

このログラインは第一幕(開始30分)で観客に示すのが望ましいです。

翔んで埼玉だと、Gacktがじつは埼玉県人(東京都に対して通行手形撤廃を目論んでいた)だと判明して二階堂ふみと埼玉へ逃亡するところが第一幕の終わりだったと思います。確か(笑)。

未来の都知事候補を養成するエリート校に転校してきた麻実麗(Gackt)は、実は東京の支配を打倒すべく立ち上がった埼玉県人だった。そんな麗に恋してしまう生徒会長の百美(二階堂ふみ)(©︎映画「翔んで埼玉)

この時点で、この物語は「埼玉県人のGacktと、都知事の息子である二階堂ふみがタッグを組んで、通行手形の撤廃を目指すべく東京と戦う話なんだな。そこがゴールなんだな」ということがわかり、映画に入り込みやすくなります。

このように「ログラインがしっかりしている」という点で、翔んで埼玉は素晴らしかったです。ストーリー自体が面白かったというよりは、ストーリー全体に1本の軸が通ってて(構成が)しっかりしていたという感じです。

高橋ソマリ
私は原作漫画を全く知らないので、最初はてっきり「斉木楠雄の災難(福田雄一監督)」のような学園日常系のコメディを想像していました。良い意味で裏切られましたね😊

埼玉ディスに見えて、そこに感じるのは自虐風の「郷土愛」

「ダサいたま」に代表される埼玉ディスというテーマは関東人には馴染みのあるもので、企画を聞いただけでも面白そうなことが想像つきます。

「埼玉県人にはそこらの草でも食わせておけ!」と罵る生徒会長・百美(©︎映画「翔んで埼玉)

 

埼玉県の描かれ方がヒドいw (©︎映画「翔んで埼玉」)

 

埼玉県人は「通行手形」がないと東京へ入れない(©︎映画「翔んで埼玉」)

映画では埼玉県人が猛烈にディスられ続けるので、一部からは「埼玉差別では?」という声が上がっているようです。

ただ、私個人としては差別どころか、作品を通して埼玉県に対する「郷土愛」を感じました。

この作品、本質的には別に外部の人が埼玉をディスっているわけではなくて、埼玉県人の埼玉県人による埼玉県人のための自虐作品だと思うんです。

もとより、日本って自虐ネタが好きですよね。

とくに地方やコミュニティの宣伝では、よく自虐的なプロモーションが話題になったりします。最近も「待たなくていい遊園地」として志摩スペイン村の自虐ネタが大きな話題になっていました。

エンドロールでは「佐賀県」で大ヒット芸人のはなわが埼玉バージョン歌ってましたが、はなわの「佐賀県」にしてもやっぱり自虐ネタってウケるんですよね

(エンディング曲のはなわの埼玉バージョンの歌。映像と合わせてみるとめちゃ面白かったですw)。

完全な私の想像ですが、「埼玉がディスられすぎててかわいそう!」って言っているのは外部の人で、当の埼玉民たちは自虐ネタで笑いあってるんじゃないかなーと思います。

実際に東京よりも埼玉の映画館の方が動員しているようですし、SNSで口コミとかみても地元民はみんな好評していました。

高橋ソマリ
ただ、内容的にも関東圏の内輪ウケ感が強いです(たぶん最初からターゲットを絞った企画だとは思いますが)。

なので、ちらっと口コミを調べた感じ、埼玉ディスに馴染みがない関東以外の人からは評価も微妙な傾向だったりします。

 

キャスティングの勝利でした

翔んで埼玉キャスティング

©︎映画「翔んで埼玉」

飛んで埼玉のキャラ紹介(キャスティング)

  • 壇ノ浦百美:二階堂ふみ
    東京都知事の息子であり、東京屈指の名門校・白鵬堂学院の生徒会長。埼玉の地名を聞くだけでアレルギーが出るほど都会人だが、埼玉県人である麗に恋心を抱いてしまう。
  • 麻実麗:GACKT
    白鵬堂学院に転入してきた容姿端麗なアメリカ帰りの青年。港区在住で高い都会指数を持つが、本当の正体は埼玉県人であり、通行手形撤廃を目指す「埼玉解放戦線」のリーダー。
  • 阿久津翔:伊勢谷友介
    壇ノ浦家の執事。実は埼玉のライバルである「千葉解放戦線」のリーダー。埼玉(麗)と同じく、千葉県の通行手形制度を撤廃するために暗躍している。
  • 壇ノ浦建造:中尾彬
    百美の父であり東京都知事。通行手形制度を悪用して多額の裏金を隠し持っている悪の権力者。
  • 埼玉デューク:京本政樹
    かつて東京都を相手に戦った伝説の埼玉県人。行方不明となっていたが生存していたことが判明する。

とにもかくにもキャラが濃ゆい。

翔んで埼玉の面白さは、一言でいうと「真面目にバカをやる」というところ。壮大スペクタクルな茶番劇です。

当然ながらギャップがある方が良くて、その点でGacktと伊勢谷友介の配役は神がかって最高でした。

翔んで埼玉 Gackt

埼玉県のリーダー(©︎映画「翔んで埼玉」)

観たあとに振り返ると、麻実麗の役はGackt以外考えられなくなるほどハマり役。

埼玉のライバルである千葉県のリーダー役である伊勢谷友介も、ただでさえ濃い顔にカラフルな衣装まとってそりゃもう二郎ラーメン並みの濃さ。もうちょっとで胃もたれしそう。

ライバル千葉県のリーダー(©︎映画「翔んで埼玉」)

というより翔んで埼玉はアレ、Gacktじゃなきゃ成り立たない笑いです。

美形が真面目にバカらしいことしてるとそれだけで面白いんですよね(笑)。ストーリーも無駄に壮大スペクタクルで、ギャップがあればあるほど「くだらなさ」が際立ちます。

それに加えて、ベルばらのような世界観、コスプレ、BL要素などとにかく味が濃い!

Gacktと伊勢谷友介のディープキスのシーンで、は館内で「きゃぁ〜」って声があがっていました。悲鳴でしょうか、興奮でしょうかw(私の心のなかではどちらかというと悲鳴でした)

とにかく40代のおじさん二人の顔が近い!

責められて「あぁん♡…」と喘ぐGackt(©︎映画「翔んで埼玉」)

高橋ソマリ
キスについてはGacktが演出に提案したようです

伊勢谷友介って脚本にすごくこだわる役者で、脚本が面白いと思えない作品には出演しない(なのでテレビドラマに出ることが少ない)というポリシーを以前に何かで読んだのですが、どういう想いで翔んで埼玉の出演を快諾したのか気になりますw

そして主人公の二階堂ふみ。正直言って役の設定が紛らわしいです。

©︎映画「翔んで埼玉」

二階堂ふみ演じる壇ノ浦百美は都知事の「息子」という設定だけど、本当に男役なのか、いわゆる「ボクっ娘」なのかの判断が開始30分くらいまで分からず😅

どうも二階堂ふみの提案で本当の男役の設定で演じることになったのだそうです。

つまりGacktと伊勢谷友介だけでなく、二階堂ふみのGacktに対する恋心もBLということで……もう二郎ラーメン野菜マシにんにくマシマシアブラカラメみたいな映画でした😇

 

SNS・口コミの広がり方について

一応わたしWEB業界で仕事をしているもので、SNSマーケティング的な側面も気になってしまいます。

以前に「カメラを止めるな!のレビュー」でも書いたのですが、近年の映画のヒットには口コミ戦略が欠かせないものになっています。

とくに翔んで埼玉なんかは、明確にニッチなターゲットを狙っています。もちろん、埼玉県の人たちです。

現時点で公開から1ヶ月程度、興収20億円を突破するほどヒットしていますが、観客の1/4は地元民だそうです。

「翔んで埼玉」観客4人に1人は地元 -朝日新聞デジタル

最初の観客である埼玉県民から口コミで好評がどんどん広がっているわけですね。狭めたターゲットに確実に刺してからじわじわ広げていく戦略は中小企業の戦いを観ているようです。

さらに、翔んで埼玉には、

  • 埼玉ポーズ
  • コスプレ
  • 「埼玉県民にはその辺の草でも食わせておけ!」という決めゼリフ

という、わかりやすくパロディしやすい要素が詰まっていて、口コミ拡散もしやすかったと思います。

埼玉ポーズ(©︎映画「翔んで埼玉」)

実際に口コミとか調べてると、芸能人の方々が埼玉ポーズをとるSNS投稿がたくさん流れたり、オタク層のコスプレネタになったりと相乗効果があったと思います。

飛んで埼玉の「埼玉ポーズ」とか、逃げ恥の「恋ダンス」とか、分かりやすく真似(パロディ)しやすいキラーコンテンツがあると口コミは広がりやすいことを実感します。

まとめ

高橋ソマリ
コメディはコメディなんですけど、ストーリーがしっかりあって、それなりにアツい展開もあったりと笑えるだけじゃない高揚感のある映画でした。

コメディ映画は周りのお客さんたちと一緒に笑って一体感を味わうのも一興です。まだ観てない人はぜひ映画館で観てほしい作品ですね。1800円払う価値は大いにありました☺️

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